「エクストリュージョン(歯根挺出術)」と「クラウンレングスニング(歯冠長延長術)」
2025年3月31日
エストデンタルケア南青山の橋本です。
春の訪れを少しずつ感じる今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。 今回は、歯が折れた場合や虫歯が進行し、歯の残存部分が少なくなった場合でも、抜歯せずに歯を残せる治療法として、「エクストリュージョン(歯根挺出術)」と「クラウンレングスニング(歯冠長延長術)」の2つをご紹介します。
【エクストリュージョン(歯根挺出術)とは?】
エクストリュージョンとは、虫歯や歯の破折によって歯肉内に埋まってしまった歯の根を、矯正的に引き上げることで、被せ物をするための十分な高さを確保する治療法です。通常、歯肉より深い位置にある虫歯や破折した歯は抜歯が選択されがちですが、当院ではできる限り歯を保存する治療を行っています。
【なぜエクストリュージョンが必要なのか?】
被せ物(クラウンなど)を安定させ、長期間使用できるようにするためには、歯肉の上に少なくとも1mm、理想的には2mm以上の健康な歯質が必要です。この高さが不足したまま被せ物を装着すると、以下のリスクがあります。
- 被せ物が外れやすくなる
- 歯根に過度な負担がかかり、歯根破折につながる
- 長期的に歯を保存できず、最終的に抜歯が必要になる
エクストリュージョンは、これらのリスクを回避し、できる限り歯を長く維持するための治療法です。
【エクストリュージョンの目的】
- 破折した歯の保存:歯肉や骨の下で破折した歯を修復可能な位置まで引き上げる
- クラウン(被せ物)の適合性向上:被せ物を適切に装着できるようにする
- 歯周病の改善:骨や歯肉の高さを整え、審美性を向上させる
- 矯正治療の補助:過剰萌出した歯を矯正的に調整し、噛み合わせを改善する
【エクストリュージョンのメリットとデメリット】
メリット
- 抜歯せずに自分の歯を残せる
- 被せ物の安定性が向上し、治療後の耐久性が高まる
- 清掃しやすくなり、虫歯や歯周病のリスクが低下する
- 審美性が向上し、自然な笑顔を取り戻せる
デメリット
- 治療に数ヶ月の期間を要することがある
- 前歯など目立つ部位では、仮歯で装置を隠す配慮が必要
- 歯根の長さが十分でない場合は適用できない
- 矯正装置を装着できる環境が必要
【当院のエクストリュージョンの方法】
- 診査・診断
- CTを活用し、歯の状態を三次元的に評価。
- 根管治療(必要に応じて)
-
- ラバーダム防湿やマイクロスコープを使用した精密な根管治療を実施。
- 装置の装着(2種類の方法)
-
- 矯正的エクストリュージョン:ワイヤーやエラスティックを用いて、ゆっくりと歯を引き上げる(数週間~数ヶ月)。
- 外科的エクストリュージョン:外科的に歯を引き上げ、短期間で固定(歯根膜の損傷リスクあり)。
- エクストリュージョン後の処置
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- リテーナーの装着:歯が元の位置に戻らないよう固定。
- 歯肉や骨の整形:必要に応じて形を整え、審美性を向上。
- 最終的な補綴治療
-
- クラウンやブリッジを装着し、機能と審美性を回復。
【クラウンレングスニング(歯冠長延長術)とは?】
クラウンレングスニングは、歯根周囲の歯肉を切除したり、歯槽骨を一部削ることで、歯の高さを確保する外科的処置です。これにより、被せ物の土台を作り、治療の成功率を向上させることができます。
【クラウンレングスニングの目的】
- 修復治療の成功率向上:被せ物を適切に装着するための歯の構造を確保。
- ガミースマイルの改善:歯ぐきが過剰に覆っている場合、バランスを整える。
- 歯周病治療:深い歯周ポケットを改善し、炎症を防ぐ。
- 生物学的幅径の確保:被せ物と歯ぐきの適切な距離を確保し、炎症や骨吸収を予防。
【クラウンレングスニングのメリットとデメリット】
メリット
- 歯を残すことができる
- 歯周ポケットの改善
- 破折や脱離のリスク軽減
デメリット
- 外科的処置が必要
- 咬み合わせの力が低下する可能性がある
- 隣の歯との歯肉の高さが揃いにくくなる
【当院のクラウンレングスニングの方法】
- 診査・診断
- CTスキャンを活用し、歯の状態を三次元的に詳しく評価します
- クリーニング・ブラッシング指導
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- 歯のクリーニングを行い、患者様に合ったブラッシング方法を指導します。
- 必要に応じて根管治療
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- 虫歯や歯の感染が進行している場合、ラバーダム防湿やマイクロスコープを使用した精密な根管治療を行うことがあります。
- 歯肉の切除
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- 歯肉が治療に影響を与える場合、歯肉を適切に切除します。
- 骨の削除(必要に応じて)
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- 歯の周囲に骨の過剰がある場合、必要に応じて骨を削除します。
- 歯冠の形成
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- 歯の上部(歯冠)の形を整え、クラウンを装着できる状態にします。
- 縫合
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- 手術後、必要な場合には縫合を行い、治癒を促進します。
- 回復期間
-
- 施術後、回復に必要な期間を経て、治療部位が安定するのを待ちます。
- 最終的な補綴治療
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- 回復後、クラウンやブリッジを装着して、機能的・審美的に理想的な状態を取り戻します。
エクストリュージョンとクラウンレングスニングは、それぞれの歯の状態に応じて選択される治療法です。歯の保存でお悩みの方は、ぜひエストデンタルケア南青山にご相談ください。