顎関節症について
2025年3月7日
エストデンタルケア橋本です。
少しずつ暖かくなり春らしさが感じられる頃となりましたがいかがお過ごしでしょうか。
実は、私自身も昨年、顎の痛みに悩まされていました。
今回は、私の体験談を交えながら、顎関節についてお話ししたいと思います。
《顎の痛みのきっかけ》
ふとした時に、「なんとなく左顎が痛い」と感じることがありました。
最初は軽い違和感程度だったため様子を見ていましたが、数日後には痛みが首や肩にまで広がり、食事をするのも辛くなりました。
そこで歯科を受診したところ、「顎関節症」と診断されました。
《顎関節症とは》
顎関節症とは、以下のような症状が現れる顎の疾患です。
- 口を開けると痛む(開口時痛)
- 口が開きにくい(開口障害)
- 顎の関節で音がする(関節雑音)
これらは、顎の関節を構成する骨・筋肉(咬筋・側頭筋など)・関節円板・靭帯の異常によって生じます。
顎関節症はⅠ型~Ⅴ型に分類されます。
Ⅰ型(筋肉の異常)
主に咬筋や側頭筋の「使いすぎ」が原因となる、いわゆる「筋肉痛」です。
こめかみの痛みを「頭痛」と感じる方も少なくありません。
Ⅱ型(関節靭帯の異常)
関節靭帯の異常、いわば「あごのねんざ」です。
口を大きく開けすぎる、固いものを食べる、歯ぎしり・食いしばりが原因となります。
耳の近くにある関節のため、「耳の痛み」と勘違いして耳鼻咽喉科を受診するケースもあります。
Ⅲ型(関節円板の異常)
顎のクッションである関節円板がずれてしまうことで、「カクカク」「ポキポキ」といった関節雑音が生じます。
ただし、音のみで痛みがない場合は治療の必要はありません。
一方、関節円板のずれが進行すると、開口障害を引き起こすことがあります。
Ⅳ型(骨の異常)
下顎の関節突起の変形によるものです。
レントゲンやCTでの診断が必要となり、変形した骨を元に戻すことは困難ですが、
「痛みなく」「十分に口が開く」ことを目標に治療を行います。
Ⅴ型(どれにも当てはまらないもの)
Ⅰ~Ⅳ型に該当しないものの、顎関節領域に異常を訴えるケースです。
心身医学的な要因が絡むこともあり、全身に痛みを感じる場合もあります。
顎関節症の治療のゴールは、「痛みなく」「十分に口が開く」ことです。
かつては関節雑音を手術で治療していましたが、現在では音のみの症状であれば治療の必要はないとされています。
《顎関節症の原因》
顎関節症は噛み合わせの異常・歯ぎしり・食いしばり・ストレス・生活習慣など、さまざまな要因が関係しています。
【主な原因】
- 歯ぎしり・食いしばり
- 上下の歯を接触させる癖(TCH)
- 片側だけで噛む癖
- 猫背や頬杖、うつぶせ寝
- 精神的ストレス(緊張・不安・気分の落ち込み)
- スポーツや事故による顎の衝撃
- 歯並びの乱れ、噛み合わせの不調和
- 被せ物・入れ歯・ブリッジの不適合
これらの原因が積み重なって発症する傾向があるため、原因を1つに特定できない場合があります。
《顎関節症の症状》
あごが痛い・疲れる
口を開け閉めする際に痛むのが特徴です。
次のように食事の時や口の開閉で顎関節に痛みが出たり、咀嚼筋に筋肉の痛みが生じます。
・あごが重い通りに動かない
・口を開けたり閉めたりすると痛い
・あご周りがいつも痛い
・食べ物が噛みにくい
・食事をしているとあごがだるくなる
・話をしているとあごが疲れる
などの症状があります。
顎関節の痛み
顎関節を構成する組織の慢性的な外傷です。
これらの組織に細菌感染のない炎症が生じて痛みが出ます。
炎症が出ると、あごを動かした際に神経を刺激されて痛みを生じます。
咀嚼筋の痛み
咀嚼筋はさまざまな原因で痛みが出ます。
一般的に多い痛みは、強い噛みしめで筋肉が緊張し続けると痛みを生じることがあります。
音がする・違和感がある
顎関節音
口を開けた際にカクっという音やジャリっという音が顎関節ですることがあります。
関節円盤がずれた状態で口を開け閉めした際に音が生じるものです。
・口を開け閉めする時に音が鳴る
・かみ合わせに違和感がある
・カクっという音やジャリっという音が聞こえる
そのほかに、関節円盤が変形して、すれ合うことでシャリシャリといった音が出ることもあります。
口を大きく開けられない
・口を開けても、ひと差し指から薬指までの3本分が入らない
・大きなあくびができない。
など口が開かなくなったり、あごに音が出るようになった場合は、関節円盤がずれて詰まったことが原因と考えられます。
《当院の顎関節症の診断》
1.CT診断
3D画像で顎の構造や噛み合わせを詳細に分析
2.ゴシックアーチ診断
噛み合わせの不具合が見られる場合、噛み合わせのズレを特定し、適切な治療へと導きます。
《当院の顎関節症の治療法》
精密検査後、症状に合わせた治療法をご提案します。
当院では主に次の治療法を行っております。
ボツリヌス治療:「ボツリヌストキシン」から毒性成分を除去して得られる特定のタンパク質を利用した治療法です。顎の筋肉である「咬力」に注射することで、筋肉の緊張を和らげ、症状を改善します。
美容医療で行われるボトックス注射と同じ原理の治療法で、以下の症状に効果的です。
・「顎関節症」の緩和
・「歯ぎしり」「食いしばり」の緩和
・「ガミースマイル」の改善
・食いしばりが原因の「頭痛」や「肩こり」
・歯ぎしりが原因の「歯周病」治療
・口元の「シワ」の改善
スプリント(ナイトガード)療法:就寝時に専用のマウスピースを装着し、歯ぎしり・食いしばりから歯を保護するとともに、顎の筋肉の緊張を緩和します。
矯正治療:噛み合わせを整えることで顎関節への負担を軽減し、症状の根本的な改善を目指します。症状を緩和します。
歯列接触癖(TCH)へのアプローチ
TCH(Tooth Contacting Habit:歯列接触癖)とは、無意識に上下の歯を接触させ続ける癖のことです。
この癖が続くと、顎関節や咀嚼筋に過度なストレスがかかり、顎関節症のリスクが高まります。
当院では、患者様にTCHの有無を確認し、必要に応じて改善トレーニングを行っています。
《痛みの緩和》
私自身、ナイトガードの使用とTCHの意識的な改善を続けた結果、3日ほどで痛みが和らぎました。
また、咬筋マッサージも有効だったため、ご紹介します。
咬筋(こうきん)のマッサージは、人差し指や中指、薬指などを使って、円を描くようにほぐします。
軽く噛みしめたときに盛り上がるのが特徴の筋肉です。
《咬筋マッサージの手順》
- 口の力を抜く
- 頬骨の下にある咬筋に指を当てる
- 円を描くように優しくほぐす(上方向に圧をかけ、下方向は力を抜く)
- 5回繰り返す
《咬筋マッサージの注意点》
- 過度なマッサージになってしまうと、咬筋を刺激し過ぎて逆効果となることもあるため、注意が必要です。顎の力を抜いて、軽く口開けながら行いましょう。
《セカンドオピニオンのすすめ》
顎関節症、食いしばり、歯ぎしりは、複数の要因が重なって発症するため、治療法もクリニックごとに異なります。
「今の治療に満足できない」「他の方法を試してみたい」と感じた場合、セカンドオピニオンを検討するのも選択肢のひとつです。
エストデンタルケア南青山では、セカンドオピニオンを積極的に受け付けております。
痛みや違和感でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。